fpと中望遠。
今回はSIGMA fp(特にSIGMA fp L)と中望遠以上のレンズの組み合わせが、様々な点で難しい理由についてお話しします。
まだSIGMA fpシリーズを持っていない方はもちろんのこと、持っていて中望遠以上のレンズを検討している方は是非参考にしてみてください!
SIGMA fp Lのレビューや中望遠レンズのSIGMA 90mm F2.8 DG DNのレビューは、他の記事でまとめているので是非合わせてお読みください!



この記事では中望遠以上のレンズとしてSIGMA 90mm F2.8 DG DNを軸に取り上げていますが、このレンズだけで発生することではなく、あくまで焦点距離に応じて発生する内容です。
結論、歪む、ブレる、難しい。

まずはSIGMA fp Lと中望遠レンズ以上の組み合わせが至難の業である理由ですが、結論から述べると写真がとても歪みやすく、とてもブレやすいので撮影が難しいです。
一つずつ詳しくまとめていきます。
ローリングシャッター歪みが顕著に現れる

SIGMA fpシリーズにはシャッター幕がなく、電子シャッターのみとなっています。
そのためローリングシャッター歪みがとても発生しやすくなっています。
ローリングシャッター歪みとは?
ローリングシャッター歪みとはイメージセンサーの読み出し時間中に、被写体が動くと被写体が歪んで写ってしまうという現象です。一般的なカメラであれば、シャッター幕が搭載されていますが、SIGMA fpシリーズやサイレントシャッター設定にした際に、シャッター幕を使用せず写真を撮影すると、この現象が発生することがあります。この歪みは、センサーの読み出し時に発生する現象のため、被写体ブレでも手ブレでも発生するものです。
ということでもっと詳しく知りたい方は、他の方がもっと専門的な知識と共に解説していただいている記事があるので、そちらを参考にしていただきたいのですが、簡潔にまとめると「写真・被写体が歪む問題が起こる現象」です。

このローリングシャッター歪みは焦点距離が長くなればなるほど、すなわち望遠になればなるほど顕著に現れます。
90mmなどのレンズと組み合わせて撮影すると、とても気を遣いながら構えて撮影することになります。
もちろん三脚や一脚を用いることができれば撮影者の手ブレから発生するローリングシャッター歪みは防ぐことができますが、普段からこのようなセットを持ち歩いているわけでもなければ、そもそもこのカメラを使用している方はスナップ撮影などで使用しているのではないかなと思います。
スナップや手持ち撮影でローリングシャッター歪みが発生するとなると、とても真剣にカメラを構えて歪みが発生しないようにする必要があります。
構えれば解決のように思いますが、このカメラにはグリップもなければファインダーもないため、腕以外で固定する手段がありません。
写真がブレる
写真がブレるのも「しっかりと構えればいいだけ」と言いたいところですが、それだけではありません。
先述のとおりシャッター幕がない電子シャッターのみのカメラなので、屋内での撮影や照明などを撮影するとフリッカーが写真に出てしまいます。
フリッカーが出ないように西日本の場合はシャッタースピードを1/60または1/125に固定する必要があります。

もうお気づきだと思いますが、シャッタースピードをフリッカーが出ないように固定すると、写真がブレてしまう可能性のあるシャッタースピードになってしまいます。
定説として“焦点距離”分の1のシャッタースピード以上でシャッターを切らないと写真がブレてしまうというので、90mmの場合は1/90以上のシャッタースピード(以下 SS)で撮影する必要があります。
SS 1/125で撮影すればブレなさそうですが、あくまでギリギリブレないSSの定説なので、普通にブレることがあります。
135mmなどのレンズを使いたい場合は特に注意が必要です。
そしてSIGMA fp Lの場合は6100万画素もあるので、少しのブレが解像感に大きな影響を与え、PCなどの画面で見た時に少し落ち込むことになります…。
ブレるなら手ぶれ補正に頼ればいいのでは?

ブレるなら手ぶれ補正に頼ればいいのでは?と言いたいところですが、SIGMA fpシリーズにはセンサーシフト式の手ぶれ補正がありません。
手ぶれ補正がないSS 1/60またはSS 1/125なので、正直苦しくなってきます。
せめて手ぶれ補正だけでも付いていれば話は変わってきますが、この小さなボディーでフルサイズセンサーを搭載したSIGMA fpシリーズに求めるのもおかしいことです。
ブレやすいのはSSと手ぶれ補正がないことだけが原因ではない
ここまでローリングシャッター歪みが起きる・フリッカー対策でSSを下げるとブレる・手ぶれ補正がないなど、様々な要素を挙げてきましたが、ブレやすいのはこれだけが原因ではありません。

SIGMA fpシリーズには先ほど触れた通り、グリップがなく、ファインダーもありません。
そのためしっかり構えてカメラを深く握り込んだり、ファインダーを顔に当てて固定するなどといった初歩的なブレ防止の動作も難しくなっています。
もちろん後付けでグリップやファインダーが用意されているので、購入して使用するのもいいですが、SIGMA fpシリーズが気になっていたり、購入した人は「コンパクトなボディーなのにフルサイズ」という点に魅力を感じている方が多いはずなのでこの選択肢も最善とは言い切れません。
なんとも絶妙なバランスで成り立っている(成り立っていないのかもしれない)カメラです。
SIGMA恐るべし。
まとめ



fpで中望遠以上のレンズを使うということはどういうことなのかをまとめていきます。
電子シャッターのみ
▼
ローリングシャッター歪みが発生する
フリッカーが発生する
▼
フリッカー対策でSSを固定する
▼
ブレる
というように、ローリングシャッター歪みとブレのダブルパンチを喰らいながらそれに適応し、戦うことができる人のみがSIGMA fp Lと中望遠以上のレンズの組み合わせで写真を撮ることができます。
と、少し大袈裟に言ってしまいましたがこれは事実です。
全く撮影できないわけではもちろんないので、あくまでこのような現象や戦いがあるということだけをお伝えしたいのですが、「気軽なコンパクトなカメラとしてSIGMA fpシリーズを導入して、中望遠以上のレンズを組み合わせると撮影時にとても気を遣いながら丁寧に撮影する必要がある」というギャップに疲れることがあるということだけはお伝えしたいです。
筆者は中望遠がとても好きでSIGMA fp Lを購入する時に合わせてSIGMA 90mm F2.8 DG DNを一本だけ購入するという癖の強い買い方をしてしまったことで、「気軽なボディーで好きな画角のレンズでもあるんだけど…なんか苦しいな…」という少し残念な時間を過ごしてしまいました。


SIGMA fpシリーズを本当に気軽に使いたい人は35mmや50mmなどの焦点距離のレンズを使うことをオススメします。
とはいえ、これまでに挙げた様々な点は中望遠以上のレンズに限らず発生することです。
あくまで標準域だとしてもフリッカーやブレは発生するので注意が必要ですが、それ以上に中望遠以上になると多くの点で問題が顕著に現れるようになってしまうということです。

そして最後にお伝えしておきたいのが、それでもfpを使いたいという魔力があること、そしてローリングシャッター歪みなどの短所は上手く活用することでこのカメラでしか表現することができない癖になっていくということです。
SIGMA fpシリーズにはどこまでも楽しみがあり、もっと使いたい、もっと試したいと思わせてくれる不思議なカメラです。
どんなこともオートやAIが助けてくれる時代に、決して便利とは言えないカメラを持ち歩く。
このことに魅力を感じ、このことを楽しめる人にはとてもオススメなカメラです。
これから購入される方は、「100%気軽なカメラというわけではない」ということに注意して検討してみてください!!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
他にもSIGMA fpに関する記事を投稿しています。
是非合わせてお読みください!


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90mmでブレる、歪むってこの人の撮り方が悪いだけなのでは? ISO100固定でやってるのかしら。SIGMA Iシリーズの中でも90mmはコンパクトでグリップもしやすいレンズだと思うのだけど。
90mmでブレるというよりは、「高画素機で電子シャッターのみであるfp Lでは、ローリングシャッター歪みとフリッカーの影響を受けるため、SSが制限される環境がありブレやすくなってしまう。特に中望遠だと顕著ですね。」と言いたかったのです。