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旅と写真

一台のカメラと旅に出る、秋の北陸金沢。

出発前

関西に住む私は金沢に訪れたことがなかったが、突如として一泊二日の金沢行きが決まった。金沢は北陸新幹線開業の時によく耳にし、訪れたいと思いつつもその機会はなかった。北陸の街はどのような街か。関西に住み、太平洋側の街を訪れることが多い私にとっては気になることだった。

金沢への出発の前日に用意を始め、カメラはLeica M11、レンズはZEISS Biogon T* 2/35 ZMのセットだけを用意した。と言いつつも心配性の私は予備にSIGMA fp Lをリュックに忍ばせた。

1日目

北陸へ。

出発の日、今回の旅は車で向かう。11月の朝は冷え込み、車には結露が纏っていた。京都から滋賀へと抜け、湖西経由で敦賀を越えて福井方面へ向かう。金沢へ向かう途中に鯖江と福井に寄ることにした。

めがねのまち鯖江

鯖江といえばめがねの印象だが、街は本当に“めがねのまち鯖江”に染まっていて、至る所にメガネのモニュメントがある。鯖江駅にはJRから置き換わったハピライン福井の電車が行き交い、学生が利用していた。北陸新幹線の敦賀延伸に伴いJRから第三セクターへと移行したこの地域に、大阪からやってくるサンダーバードはもう見られない。線路は繋がっているものの列車は繋がっていない、そんな元特急停車駅となっている。

福井で昼食

鯖江の街を軽く見つつも福井へと向かう。福井へは下道で1時間ほどだっただろうか。福井に到着した時、時刻は12時。京都バスと同じカラーリングの京福バスや、想像以上に都市化した駅前に驚きながら昼食を探す。

福井といえば、ソースカツ丼と越前そば。欲張りだがこの2つが同時に食べられるところを探して訪れた。ソースカツ丼は想像以上にソースに浸かったカツがご飯にのったシンプルな丼もので、サクサク感としっとり感が同時に味わえるとても美味しいソウルフードだった。越前そばは冷たい出汁に浸ったそばで、ざる蕎麦とはまた違う。たっぷりの大根おろしとカツオ節の風味でさっぱりしている。セットで食べることで、少し味の濃いソースカツ丼を越前そばでさっぱりさせることができた。

空腹を満たして金沢へ向かう。金沢へは北陸自動車道を走って約1時間半ほど。天気が変わり続け、太陽の光を感じると思えば雲に覆われる。日本海側であることを感じる。

ハイウェイオアシスで
日本海を眺める。

途中、ハイウェイオアシスと書かれたパーキングエリアに立ち寄った。これが大正解で、日本海側を見ることができるオアシススポットだった。

日本海側育ちの祖母が「あの水平線の向こう側には何があるのか、ずっと考えていた。」と話していたことを思い出す。曇り空でどんよりとした浜辺。どこか寂しい雰囲気が漂う日本海に太陽の光が差し、虹が出ていた。

金沢と金沢駅

ハイウェイオアシスから金沢へ向かい、金沢市街に到着。アイオーデータやアパグループなど石川県の会社が目立つ。まず金沢駅へ向かうと、有名な鼓門が迎えてくれた。鼓門と金沢駅を繋ぐ大屋根「もてなしドーム」は、雨や雪の多い北陸に住む金沢の人々が傘を差し出すおもてなしの心を表現したもの。この日も雨が降るタイミングがあったが確かにそれは大きな傘となっていた。

そんな大きな傘のようなもてなしドームはアルミニウム合金とガラスでできた国内最大級のアルミニウム建築物で、とても迫力がある。鼓門に合わせて設計されているため、鼓門ともてなしドームを同時に見るとまるで長い歴史と現代技術の融合のようだ。そんな金沢駅は世界で最も美しい駅14駅の1つに選出されている。

浅野川大橋と主計町茶屋街・ひがし茶屋街

すっかり暗くなってしまったが、金沢駅を訪れた後は主計町茶屋街(かずえまちちゃやがい)・ひがし茶屋街へ。

2つの茶屋街の間には浅野川が流れ、そこには浅野川大橋が架かる。浅野川大橋は2022年に100周年を迎え、国登録有形文化財に登録されている歴史ある橋。100年前まで木造の橋が架かっていたようだが、10回以上流されてしまったらしい。そうしてできた今に伝わるこの橋はコンクリート製のアーチ橋で、レトロ調の照明が映える。個人的には橋はもちろんのこと、橋の横にある橋場町停留所がとても気に入った。

主計町茶屋町には、歴史ある料亭が並び、いかにもという雰囲気。夜に静かに賑わう町で、とても落ち着いた雰囲気が漂っていた。ひがし茶屋町は昼に営業するお店が多いようで、空いているお店や料亭はあまり見受けられなかったが、金沢らしい場所を見ることができた。

筆者には歴史に関する深い教養が足りないためこれ以上理解することができなかった。知識がないと深く街を楽しめないことを改めて感じ、いつも京都に住みながら何を学んでいるのかと気づかされた。

金沢の繁華街、香林坊・片町。

泊まるホテルのチェックインを済ませ、金沢の繁華街である香林坊を散策。スナップしながら夕食を探す。歩いているといかにも森山大道さんの写真のような写真が並ぶ道を発見したのだが、あの有名な犬の写真を見つけたことで確信した。調べてみると森山大道さんの写真で街をジャックする企画のようだ。インパクトの強いモノクロの写真が街にインストールされると、その道は違和感と言えるほどの雰囲気を醸し出していた。

片町を歩いていると多くのキャッチの人がいたが、声かけが驚くほどにサラッとしている。ここだけの文化なのか筆者が知らないだけなのかわからないが、声かけはサラッとしているものの、お店のメニューを見せてくるという不思議な文化が浸透していた。

夕食はお寿司屋に入り、北陸の海鮮を頂く。海鮮はもちろん美味しかったのだが、お酒が飲めない筆者が注文した“金沢湯涌サイダー 柚子乙女”というサイダーが想像以上に美味しかった。

犀川大橋・にし茶屋街

夕食を香林坊・片町で頂いた後、夜の金沢の街を少し歩いてみた。西に向かって歩いていくと、大きな立派な犀川大橋(さいがわおおはし)に到着。先ほど見た浅野川大橋と違って大きなトラス構造の銅材でできた橋。こちらも100年前は木造の橋が架けられていたようだが、時代の変化とともにコンクリート製の橋に切り替わる。だがコンクリート製の橋は豪雨の影響で3年という短命で終わり、今に伝わるこの立派な犀川大橋が架けられた。この犀川大橋は2024年で100周年を迎え、先ほどの浅野川大橋と2年違いでどちらも100年以上愛されているらしい。

犀川大橋を渡り、さらに西へ歩いていくとにし茶屋街に到着。時刻は22時半を超え少し遅くなってしまったが、にし茶屋街を散策して金沢にある代表的な3つの茶屋街をとりあえず制覇した。

にし茶屋街からの帰り、8番ラーメンを発見。このお店は北陸地方で愛されているラーメン屋のようで、好奇心のままに入ってみた。ラーメンのスープが選べて、今回は人気という塩スープを選択。ラーメンは野菜ラーメンという感じで、塩のスープもあっさりしていて食べやすい。少しちゃんぽんのような、中華そばのような…。これが8番ラーメンである。ちなみに麺は少し太めのちぢれ麺でとても美味しかった。

そうして1日目は終了。

2日目

近江町市場とチャンピオンカレー

2日目は曇り時々雨の1日。北陸地方だから雨なのか、偶然被ってしまったのか定かではないが、雨が多いというのは確かのようだ。

そんな天気の中でも近江町市場は想像以上に賑わっていた。観光客、地元の人、修学旅行生…。多くの人が近江町市場で食を楽しんでいる。もちろんここで海鮮を頂いたのだが、昼食はチャンピオンカレーにすることにした。

チャンピオンカレーとは、カレーライスの上にカツがのっていて、さらにソースがかけられた金沢発祥のカレーのことらしい。辛さは控えめでとても美味しかったのだが、想像以上の量だったためSサイズがいいかもしれない。それにしても福井のソースカツ丼に引き続きソース系の食べ物で、比較的味が濃い。北陸の人は濃いめの味を好んでいるのだろうか。大阪の人よりソースを好んでいるのでは…。

金沢21世紀美術館

昼食を終え、近江町市場から金沢21世紀美術館へ。金沢21世紀美術館は円形のガラス張りの建物が特徴的で、私にはこのモダンな雰囲気がとても好みだ。2024年で20周年の金沢21世紀美術館だが、未だ新さを感じるほど。

天気が微妙すぎる…

金沢21世紀美術館には常設されている作品があり、タレルの作品「ブルー・プラネット・スカイ」がその1つ。とてもミニマルな空間と天井に空いた四角い穴で構成されているが、天井の開放部はガラスすらなく、外と繋がっている。私はこの空間に入った瞬間に驚きを超える没入感を感じた。タレルの作品は光やミニマルを軸に作られており、光から感じる神秘性はタレルが信仰する宗教から来る要素らしい。

金沢21世紀美術館の建築が気に入ったので、“金沢21世紀美術館 オフィシャル・ミュージアム・ガイド”と、その他デザインの本を購入した。

金沢の私鉄、北陸鉄道 石川線

金沢には北陸鉄道が走っており、浅野川線と石川線の2路線が現存している。浅野川線は金沢駅の地下に乗り入れているため都市と周辺を繋ぐ鉄道路線のように感じるが、石川線は野町駅から鶴来駅を繋ぐローカル線である。石川線の野町駅は、1日目の夜に訪れたにし茶屋街からすぐのところにあり、とても趣のある駅だ。

私は北陸鉄道についてそこまで知らなかったのだが、マップで見ている時に気になったのでせっかくならと野町駅から新西金沢駅まで2駅だけ乗車することにした。

駅に自動改札機はなく、全国ICカードも使えない。切符を購入し、駅員さんに改札でスタンプを押してもらう。列車は少し長めの発車メロディが流れたあとにゆっくりと発車する。渋い音を出しながら想像以上のスピードで走っていくが、とにかく揺れる。ローカル線あるあるだろう。

そうして2駅先の新西金沢駅に到着。時間にして約5分の乗車だった。少し新西金沢駅を見たあと、車に乗って帰路につく。

旅を終えて

北陸・金沢の旅は想像以上の発見や新しい感覚があり、とても良い旅だった。大阪駅や京都駅で流れるサンダーバードの案内放送で聞こえてくる「鯖江」「福井」「金沢」などの場所が実際にはどのような街なのか。少しの時間ではあったが、実際に訪れてみないとわからないことが多くあった。

少し離れた場所で日々の生活を送る人々、趣のある街と歴史ある橋、美味しい食材とグルメ。ずっと関西にいる私にとって大阪や京都はとても好きな街だが、そこにいるだけでは見えてこないものが確実にある。カメラを持って旅に出ることが、人にとってどのような影響を与え、成長させてくれるのか。“ただ旅に出ているだけ”なのかもしれないが、深く考えてみるのも良いかもしれない。

関連情報

使用機材

カメラ|Leica M11

レンズ|ZEISS Biogon T* 2/35 ZM

カールツァイス
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Yusei

Yusei

運営・ライター

京都生まれ大阪育ち、京都市在住。幼い頃にNikonのコンパクトデジタルカメラに触れ、写真を撮り始める。小学生の頃にNikonの一眼レフを購入し、写真撮影を始める。高校入学と共にカメラを本格的に使い始め、映像制作も行う。写真撮影はスナップからポートレート、記録・風景・鉄道など様々。

  1. 一台のカメラと旅に出る、秋の北陸金沢。

  2. ピントではなく、距離を見るようになってきた。|Leica M11

  3. 苦手な35mmを使い続けて見えてきたこと。|ZEISS Biogon T* 2/35 ZM

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