35mmを楽しむ。
今回はコシナが製造するZeissレンズ、ZEISS Biogon T* 2/35 ZMをレビューしていきます。
筆者は購入してから半年以上、ほぼ毎日持ち歩いています。
この一本だけで日常のスナップを撮影したり、旅に出るほど気に入っているレンズです。
このレンズは2005年発売と、決して新しいレンズではありませんが2024年時点では新品で手に入れることができるレンズです。
Mマウントで距離計連動システムを搭載しているためM型Leicaではもちろん、マウントアダプターを使うことであらゆるカメラで使用できます。
それでは詳しく見ていきます!



レビュー
35mmの標準単焦点レンズ。
このレンズは先述の通り、日本のコシナが製造しているZeissブランドのレンズです。
ZeissのMマウントレンズということで、レンズ名の最後に「ZM」とついています。

同じシリーズのラインナップの35mmとしてはZEISS Biogon T* 2/35 ZMの他に、ZEISS Distagon T* 1.4/35 ZM、ZEISS C Biogon T* 2.8/35 ZMがあります。
35mmだけでF1.4・F2・F2.8がラインナップされており、沼への入り口でしかないラインナップです。
筆者は開放F値とサイズ感、価格のバランスを考えて、F2のZEISS Biogon T* 2/35 ZMを選択しました。
35mmといえば、標準域(準標準とも言われる)のレンズで、比較的広角のレンズと言えます。
個人的な感覚では、スナップで3〜5mほどの距離を撮影するのに最適な広さです。
日常の撮影にもちょうどいい焦点距離ですが、35mmに慣れていない人は慣れるまで難しい焦点距離かもしれません。(筆者は35mmが苦手です…)
ちなみに、Zeissのレンズには、Biogon(ビオゴン)・Distagon(ディスタゴン)・Planar(プラナー)などの名前が付いていますが、これはレンズの設計ごとに付けられています。
Leicaは開放F値ごとに、F2のSummicron(ズミクロン)・F1.4のSummilux(ズミルックス)などと付けられているので、ブランドごとに思想が大きく異なることが想像できます。
軽量でコンパクト、
ビルドクオリティも最高。
まずはレンズ筐体の話から。
AFも手ぶれ補正も付いていないマニュアルレンズのため、現代のレンズと比べるととてもコンパクトです。
そしてマウント、リング、筐体全てが金属で作られているにもかかわらず、重量は240gととても軽量です。

ビルドクオリティに関してZeissのHPには「全てのZMレンズのマウントおよびコントロール部品は金属製で、数十年間の厳しい使用に耐え得るよう設計されています。」と記載されています。
実際にレンズを持ってみると、金属の程よい重さと質感、滑らかなフォーカスリング、クリック感の良い絞りリングがとても気持ちよく、テンションを上げてくれる完成度です。
この後に描写について触れますが、描写はもちろんのこと、道具として所有欲を満たしてくれる感覚や、道具としての安心感はやはり重要だと考えています。
このレンズは、そんな道具としての満足度が高いプロダクトです。
申し分ない描写力
レンズでやはり語るべきは描写について。
ZEISS Biogon T* 2/35 ZMはしっかり写る一面と、クセのある一面の両方を備えたレンズです。



コントラストと色
このレンズはコントラストが高く、彩度も比較的高く写る傾向があります。
Raw現像時に、コントラストや彩度を少し落とすくらいがちょうど良いと感じるほどにハッキリと写ります。
シャドウにブルーが少し出るような、Zeissらしい雰囲気を出してくれるのもポイントです。
Planarほどではありませんが、スッキリとした雰囲気や空気感のある描写をする時もあるとても良いレンズです。

描写とソフトフィルター
想像以上にしっかりと描写します。
6000万画素時代にも問題なく使用することができるレベルで、クロップにも耐えうるしっかりとした解像感です。
逆にSIGMA fp LやLeica M11などの6000万画素レベルのセンサーを搭載したカメラでZEISS Biogon T* 2/35 ZMを使用すると、写りすぎて硬くカリカリとした描写に感じることがあります。
「邪道だ」と言われるかもしれませんが、個人的にはソフトフィルター系のフィルターを付けると落ち着きを感じられる描写になるのでオススメです。


また、ソフトフィルター系のフィルターはコントラストを少し下げてくれるため、少しコントラストが高いと感じるこのレンズには最適です。
個人的にはNiSiのブラックミストフィルター1/8(一番効果の弱いもの)がオススメですが、このレンズのフィルター径である43mmのラインナップが無いため、ステップアップリングを用いる必要があります。
写りに関するデメリットとして、最新のレンズと比べると逆光耐性は低く、フリンジも出るため気になる人には懸念点になるかもしれません。
歪みの少なさ
35mmのレンズになると歪みが気になり始めるレンズが出てきますが、ZEISS Biogon T* 2/35 ZMはあまり歪みを感じません。
それもそのはずで、このレンズの設計思想であるBiogonは、広角レンズの歪曲収差を抑えるための設計がされており、このレンズもしっかりと受け継いでいます。
最後に残った多少の歪曲はLightroom等で軽く補正をかけるだけでまっすぐになります。
デメリットとしては、最新のレンズと比べると逆光耐性は低く、フリンジも出るため気になる人もいるかもしれません。

Biogonのクセを楽しむ
実はここからがこのレンズの最大のポイントです。
度々登場している「Biogon」という設計。
Biogonという設計は、開放F値を低くする(明るくする)ことよりも広角レンズ用に設計されたもので、コンパクトなレンズになるように工夫されているのがポイントです。
広角レンズ用に設計されているので、先ほどの“歪曲収差が少ない”という話もここに繋がるわけです。
このBiogonの面白いポイントは、大まかにいうと「フィルムカメラに最適化された設計である」ということです。
バックフォーカスが短く設計されているため、一眼レフカメラやミラーレスカメラではイメージセンサーに後玉が干渉する恐れがあるほど飛び出しており、使うことができないカメラも多いようです。

このBiogonのレンズをデジタルセンサーのカメラに使用すると後玉がセンサーに近いことで、イメージセンサーに光が入るときの角度が急になり、イメージセンサーがうまく光を受け取ることができないという現象が発生します。
フィルムは斜めの光も感光できたものの、デジタルのイメージセンサーは斜めの光に弱いようです。
そんなイメージセンサーにBiogonのレンズは斜めに光を与えます。
長々と説明してきましたが、そうなると写真はどうなってしまうのか。

写真の四隅に滲みが発生し、独特な描写を生み出します。
筆者はこの滲みのためにZEISS Biogon T* 2/35 ZMを使っていると言っても過言では無いほど、この滲みを楽しんでいます。
コンピュータでは生成できないような、フィルターでも再現できないような、そんな滲みを写真に与えてくれます。
滲みなのでボケとはまた違う表現で、中心はしっかりと描写しているのが面白いポイントです。

そして全ての写真の四隅が滲んでしまっては困りますが、この滲みは少し絞ることで大きく改善されます。
滲みを取り入れたい時は開放のF2を、それ以外の時はF2.8など、F値を変えるだけで2つの表現を楽しむことができるレンズです。
まとめ



今回はコシナが製造するZeissレンズ、ZEISS Biogon T* 2/35 ZMをレビューしてきました。
軽量コンパクトでビルドクオリティの高い筐体、6000万画素センサーにも耐える解像力と描写、開放では滲みを楽しむことができる二面性を持ったとても魅力のあるレンズです。
メリット
- Zeissブランドを楽しむことができる
- 軽量・コンパクト
- ビルドクオリティが高い
- 距離計連動対応で精度も高い
- コントラスト高く色もしっかりと出る
- 申し分ない描写
- 歪曲収差が少ない
- 開放では滲みを楽しむことができる
デメリット
- 逆光耐性が低い
- フリンジが出る
- 開放では滲みが発生する
旅にこのレンズ一本で出るという選択ができるほど良いレンズで、安心感と信頼感があります。
冒頭でもお伝えしましたが、日常のスナップや記録にも最適なサイズ感で、筆者は毎日持ち歩いています。
そんな魅力あふれるのZeissのレンズを検討してみてはいかがでしょうか。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
関連情報
使用機材
カメラ|Leica M11・SIGMA fp L
レンズ|ZEISS Biogon T* 2/35 ZM
関連記事

クイックアクセス






カテゴリータグ






SNS・新着通知(無料購読)




コメント