見ているのはピントではなく、距離なのか…。
M型Leicaといえば、レンジファインダーだろう。M型Leicaのレンジファインダーを覗くと中心に四角の明るい部分がある。その中に映し出される像と、ファインダーに見えている像をピッタリ合わせることでピントが合う。これを二重像合致式というらしいのだが、私はM型Leicaを使い始めて約4ヶ月。Leicaを語ることができるほどの知識がまだないため、残念ながら深掘りはできない。だが、この像を合わせていく行為はとても独特なものである。一眼レフやミラーレスでは感じることのできないピント合わせだ。だが、これは本当にピント合わせなのだろうか。

距離を測る、
距離を見るという行為。
像を合わせるために動かすのはレンズのピントリング(フォーカスリング)である。ピントリングを回すことで、四角の中の像が横に動き、二重像がピッタリと合う瞬間が訪れる。この動作は距離計を動かしているということでもある。距離を測る行為と、ピントを合わせる行為を同時に行なっている。距離計を動かして像が重なる瞬間を探すという行為、これは距離を測る行為 = 距離を見ていると言える。
そもそもレンジファインダーのレンジとは、英語で「距離」や「範囲」を意味するらしい。ここにファインダー(探すもの・測るもの)が組み合わさり、レンジファインダー「距離を測る装置」という意味になる。
そう考えてみると、M型Leicaでピントを合わせる時、私たちが行なっていることはピントを合わせるということより、距離を見ているのではないだろうか(ピントリングを回す過程で距離も測ることができているとも言える)。私たちは被写体との距離を測り、同時にレンズがその距離に合わせてピントを合わせてくれている。つまり私たちは直接ピントを見ていない。

一般的な一眼レフなどのカメラで、距離の測定を人が行うことはない。MF時でもピント合わせはピント面を確認する行為であり距離を測っているわけではない。被写体までの距離をメジャーで測って、ピントリングを回してピントを合わせることなど、ほとんどやったことがないだろう。やはりM型Leicaのレンジファインダー内で距離を見るという行為は独特なものである。
ピントを合わせるから、
距離を見るへ。
そんなことを考えながらM型Leicaで写真を撮っていると、被写体との距離を考え始め、最近では感覚で距離を測ってからファインダーを覗く。私の技術ではまだそこまで早く距離を合わせることはできないが、少なくとも距離を意識するようになった。「あれはだいたい3mか…、あれは5mだ…。」というように、目の前に広がる空間に対して距離という指標を用いて考えるようになったのは大きな変化である。

そしてもう一つ大きな変化として、ピントをそこまで意識しなくなった。ピントがしっかりと合っているかどうかをプレビューで確認する頻度が減ってきたと感じる。“ピントを合わせるから、距離を見る”へと変化したことで、写真と空間に対する捉え方が変わっていく。これがM型Leicaにある大きな力の1つだろう。
関連情報
使用機材
カメラ|Leica M11
レンズ|ZEISS Biogon T* 2/35 ZM
関連記事
クイックアクセス






カテゴリータグ






SNS・新着通知(無料購読)




コメント